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【Adobe MAX 2006レポート Vol.3】“次期製品”では有機的な連携が可能に――初日基調公演

2006年10月26日 11時29分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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米ラスベガスのベネチアンホテルで現地時間の24日に開幕した“Adobe MAX 2006”の基調講演は、3画面の巨大スクリーンを使った派手な舞台に3000人以上の来場者を迎えて幕を開けた。

水柱を上げるドラムと、ちょっと下品な芸で
聴衆を魅了する青い奴ら“Blue Man Group”

“Blue Man Group”の派手なオープニング
ライブパフォーマンスグループ“Blue Man Group”の派手なオープニング。写真はドラムに色つきの水を流して水柱を上げるというパフォーマンス

スクリーンの下の舞台が反転するや、いきなり登場したのはBlue Man Groupの3人だった。彼らはかつて米インテル社のCMキャラクターとしても活躍したので、名前は知らなくても真っ青な顔に見覚えがあるという読者は多いだろう。現在彼らはここベネチアンホテルで公演を行なっているが、基調講演の来場者はそのチケットを買わずに、Blue Man Groupの個性的な芸をお得に堪能できたわけだ。

“MAX”の3文字が白く浮かび上がる パイプを使った音楽アート
その水柱を使って紙に色を載せていくと、“MAX”の3文字が白く浮かび上がるこのほか、10mくらい離れた場所からガム(マシュマロかも?)を投げさせて口で受け止めた後、その噛んだガムを吐き出してこんもりと山にしてみたり、紙に吹き出して前衛的な絵(!?)を描いてみせたりと、子供がまねるとかなり下品な、でもなんだか笑える芸を次々披露。写真は最後にパイプを使った音楽アートを見せているところ

Photoshop、Flash、Fireworksなど
主力ツールの次期バージョンで有機的な連携が可能に

ケビン・リンチ氏
基調公演の司会はご存じケビン・リンチ氏

Blue Man Groupで会場を盛り上げた後に登場したのは、CSA(最高ソフトウェア設計責任者)のケビン・リンチ(Kevin Lynch)氏。

初日の基調講演のテーマは、昨年12月に果たされた米アドビ システムズ社と米マクロメディアの“結婚”――買収合併後のデザイナー/デベロッパーのワークフロー改善だ。両者が結婚した最初の成果は、買収完了後すぐ(2005年12月)にリリースされた“Adobe Flash 8”を同梱する“Creative Suite”の発表だった(関連記事)。

HTML作成のワークフロー改善のデモ
HTML作成のワークフロー改善のデモ。画面はワークフローを模式的に示した図で、Photoshop、Fireworks、Dreamweaver、そして動的データ連係を行なうSpryを使うというもの

それから10ヵ月あまり。両者は深く親密な時間を経て、より有機的な協調を果たすべく進化を続けていると説明した。例えば先日発表されたAcrobat 8では、旧称『Macromedia Breeze』を取り込んで『Adobe Acrobat Connect』とし、オンサイト/リアルタイムでのビジネス文書のレビューやコラボレーションを実現し、PDFをさらに活用できるツールへとAcrobatシリーズを進化させた。と、ここまではすでに発表済みの内容。

Photoshop次期バージョンの画面 情報ウィンドウをアイコン化して、作業スペースを広く使うことができる
Photoshop次期バージョンの画面。あいにく個別製品の紹介がメインではないので、新機能の詳しい説明はほとんどなかった唯一説明された新機能がこれ。レイヤーやヒストリーなどの情報ウィンドウをアイコン化して、作業スペースを広く使うことができる
現在開発中のAdobe Photoshopの次期バージョン

話はさらに、現在開発中である各アプリケーションの将来バージョンでの連携にも及んだ。例えば“HTMLページ作成”の効率化。披露された画像編集ソフトの“Photoshop”、動きのあるFlashアニメーションコンテンツを作成する“Fireworks”、ウェブページ作成ソフト“Dreamweaver”の次期バージョンだ。まずPhotoshopでウェブページの平面的なイメージを作り、次にそのデータをFireworksで読み込んで動きのあるパーツ(Flashファイル)を生成する。次世代Fireworksではレイヤー構造付きのPhotoshopファイルを直接読み込めるようになり、各種フィルターもFireworksのものに変換されるため、Fireworks上からPSDファイルのエフェクトを直接設定変更できるという。続いてDreamweaverでHTMLページに設計して、最後に“Spry”(スプライ)を使ってAjaxを使った動的なデータ連係や画面遷移のないユーザーインターフェースを実装する、という具合だ。Spryとは見慣れない名前かもしれないが、Adobe Labsで提供中のCSS/JavaScript実装用フレームワーク(開発途上版)。Dreamweaverと組み合わせることで、容易にAjaxの実装ができるという。

Fireworksの次期バージョン
Flashファイルを作成するベクターベースの画像編集ツール、Fireworksの次期バージョン
Fireworksでレイヤー構造付きPSDファイルを読み込んだところ Fireworksのレイヤー構造を示すウィンドウ
Fireworksの次期バージョンではPSDファイル(Photoshopデータ)をネイティブサポートする。画面はレイヤー構造付きPSDファイルを読み込んだところ。どのレイヤーとレイヤースタイル、フィルターなどを有効にするかを選択できるFireworksでレイヤー構造が有効になっていることがわかる
現在開発中のAdobe Fireworksの次期バージョンでPhotoshopデータを扱う

Flashコンテンツに載せる音楽データの編集ソフトとしては、開発中の“Soundbooth”が披露された。同社にはすでに音楽編集ソフト『Audition』(オーディション)もあるが、こちらはサウンドクリエイター向けに高度な音楽編集機能を搭載していたのに対し、より簡便な操作でFlashコンテンツに割り当てるBGMを制作するために開発されたもの。音源素材を組み合わせて効果音を付けたり、屋外で録音した音源素材からノイズを除去する、特定周波数の音だけを強調/減少させるなどの編集が可能という。

LiveCycleとFlashの融合のデモ LiveCycleとFlashの融合のデモ2
まず紙のフォームをスキャンしてPDFファイルを作成する。この時点ではまだただの画像データでしかないLiveCycle Designerの機能を使って、入力フォームを自動生成する。PDFを入力フォームとした情報収集が可能となる。ここまでは従来のLiveCycle Designerでも実現されている機能だ
現在開発中のAdobe LiveCycleの次期バージョンで、Flashとの連携を行なうデモ

このほか、“PDFとFlashの境界をなくす”と銘打って、自動車保険の事故報告書を作成する場面でPDFとFlashファイルを組み合わせた例も紹介された。デモでは、紙の書類をスキャンして文字入力枠を自動生成したPDFファイルを生成したり、Flashを使ったウェブサービスで破損した場所と損壊の状況をマウス操作で簡単に入力すると、先ほど生成したPDFファイルに自動的に入力されるといったソリューションをデモしていた。実際、事故に遭った直後は落ち着いて文書に記入するのは難しいもので、グラフィカルなインターフェースとプルダウンメニューによる選択で記入できるのは助かるはず。この機能は“Adobe LiveCycle”シリーズの次期バージョンで機能提供される予定だという。

LiveCycleとFlashの融合のデモ3
さらに次世代LiveCycleでは、Flashを使ったウェブページからの入力支援にも対応する。ただし、今回のデモでは同等の機能をFlex Builder 2で実現していたとのこと。画面で赤く見えるところが事故で破損した場所で、損壊の状況はプルダウンメニューから選択できる。入力結果は自動的にPDFファイルにも記入される

この基調公演ではツール間、特に従来からのアドビ製品と旧マクロメディア製品との間の連携がメインテーマだったため、個別の次期製品の新機能や特徴は紹介されなかった。これらの情報は3日目の基調公演“スニークプレビュー”で披露されると思われる。

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