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【Adobe MAX 2006レポート Vol.6】“BREW”でFlash Liteを配信開始――米国携帯事情


2006年10月27日

携帯電話に少しでも詳しい人ならこのタイトルを読んで、「え、これって何年前の記事?」と思ったかもしれない。米国の携帯電話事業者Verizon Wireless(ベライゾン・ワイヤレス)社がBREW(ブルー)においてFlash Liteの提供を始めたというニュースは、“Adobe MAX 2006”の初日夜(現地時間の24日21時)にもたらされたものだ。

掲載当初、米国でBREWが24日に開始された、という記述がありましたが、正しくはBREWサービス自体は米国でも2002年6月に開始されており、24日に開始されたのはBREWを通じたFlash Liteの提供、となります。これに合わせて本文を一部修正しました。お詫びして訂正いたします。 (2006/10/30)

アヌープ・ムラーカ氏
モバイル・デバイスビジネスユニット モバイル&デバイス部門担当ディレクターのアヌープ・ムラーカ氏

日本でクアルコムジャパン(株)が、KDDI(株)のau携帯電話機向けアプリケーション実行/配信/課金プラットフォームとして“BREW”を発表したのは2001年1月、そしてエヌ・ティ・ティ・ドコモ(株)がFlash Liteを活用した“iチャネル”サービスを世界に先駆けて発表したのは2005年8月のことだった(関連記事1)。ここでは、2日目の基調講演のメインテーマとなった“モバイル”――携帯電話機や組み込み機器向けRIA(リッチインターネットアプリケーション)について、講演の内容と前日に行なわれたモバイル・デバイスビジネスユニット モバイル&デバイス部門担当ディレクターのアヌープ・ムラーカ(Anup Murarka)氏へのインタビューから、米国の状況を報告する。

そもそもBREWって?

2日目の基調講演にビデオで登場したVerizon Wirelessの副社長のジョン・ストラトン氏
2日目の基調講演のメインテーマは“モバイル”。初日の夜に米クアルコム社とアドビ システムズ、Verizon Wirelessが共同で、米国でのBREWプラットフォームとFlash Liteの提供開始を発表したから、会場は初日に続いての盛況ぶりだった。会場には来られなかったVerizon Wirelessの副社長のジョン・ストラトン(John Stratton)氏がビデオメッセージを贈った

BREWは、単に(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモのiアプリ(Javaアプリケーション)への対抗馬というものではない。C/C++で開発したネイティブアプリケーション(※1)を実行できる動作環境であると同時に、アプリケーションを配布してユーザーから利用料を課金・徴収し、開発者/提供元に配分する“アプリケーションプラットフォーム”である。BREWを通じたアプリケーション提供には認定(au携帯電話機の場合はKDDIによる)が必要で、プログラムの自由度が高いネイティブアプリケーションで“悪意のあるコードが実行される”などして、ユーザーに不利益がないように審査するのもBREWの重要な役目というわけだ。

※1 ネイティブアプリケーションのほかに、BREWで動くJava-VM(仮想マシン)を使ってJavaアプレットを実行することもできる。実際、KDDIでは2007年春にBREW経由で実行するJavaアプリケーションについては、審査・検証なしで利用できる“オープンアプリ”環境を提供予定と発表している(関連記事2)

米クアルコムの社長のペギー・ジョンソン氏
米クアルコムの社長のペギー・ジョンソン氏が登壇し、BREWのエコシステムを説明した

ここまでは米アドビ システムズ社に直接関係のない話だが、今回BREW経由でFlash Liteの配布が始まることによってFlashゲームなどパソコン向けに開発したRIA/リッチコンテンツを提供する場が携帯電話機にも広がった、デベロッパーやデザイナーが一儲けできる大きな市場がまたひとつできた、というのが基調講演で一番訴えたかったことだろう。

BREWのエコシステム
ジョンソン氏が説明したBREWのエコシステムの図。開発者は新しいアプリケーションを作り、BREW(携帯電話事業者)がテスト、検証する。そしてユーザーがダウンロードすれば課金されてデベロッパーは開発費を回収でき、また新しいアプリケーションを開発できるという循環を説明していた

事実、ムラーカ氏は「NTTドコモ、KDDIなどのおかげでFlash Liteは広まっている。日本はいいショーケースであり、これからも最先端を走り続けるだろう。Flash Liteは世界中で1億1500万のデバイスに搭載され出荷されている。これはエキサイティングなこと。携帯電話機だけでなく、TVやSTB(セットトップボックス)、おもちゃなどにも使われている。さらに2005年には105機種だった(Flash Lite搭載の)ケータイが、今年だけで150機種以上も認定され、年末までに250種以上に増えることになる。さらにケータイ関連の参加者も増えており、全世界で21万以上のデベロッパーがいる。これもまら昨年から爆発的に成長した数字で、これからもますます増えるだろう」と述べ、米国のBREW/Flashプラットフォームに追い風が吹いていると現状を称えた。

BREWでガッポリ儲けるの図
2日目の基調講演では、登壇者からデベロッパー/デザイナーに向けて「儲けましょう」「稼ぎましょう」のエールがかなり頻繁に聞かれたが、この図もそのひとつ。BREWのデベロッパーコミュニティーとFlashのコミュニティーに、世界的なBREWプラットフォームの市場が合わさると、各国の通貨でガッポガッポ、だそうだ

米国のFlash Liteはパソコン的インストール
日本のケータイとは決定的に違う!!

この米国のBREW/Flashプラットフォームだが、日本のケータイ事情とは決定的に異なる点がある。日本の携帯電話機の場合、Flash Liteは最初から本体に組み込まれており、サービスと一体化した形で提供されていることだ。つまり携帯電話事業者によってFlashコンテンツを使える/使えないが決められている。例えば、NTTドコモの場合はFlashコンテンツによるニュースや天気予報などの情報配信サービス“iチャネル”とともにFlash Liteの搭載が始まり、iチャネルを利用するにはFlash Lite搭載端末を買わなければならない。パソコンのように、ユーザーが自分の意志でFlash Lite(パソコンで言えばFlash Player)を入手することはできないわけだ((株)ウィルコムの端末では、Flash Playerを購入して追加できる機種もあるが、これはフルブラウザーでパソコン向けウェブサイトを見るために使う)。

これに対して、米国のBREW/Flashプラットフォームでは、BREWのメニューからFlashゲームを購入した場合、BREWがユーザーの端末の状態を調べて、Flash Liteがインストールされていない場合には、自動的にゲームアプリとFlash Liteをダウンロードし、インストールする。これはパソコンのFlash Playerと同じ手法だ。

もちろん、日本の携帯電話事業者側にも言い分はあるだろうが、パソコンユーザーから見た場合、どちらがより望ましいかは明白だ。

Flashでの開発環境を説明
2日目の基調講演では、さらに開発者向けにFlashでの開発環境も説明された。画面は、ジャングルのツタを渡っていくFlashで作ったアクションゲーム。携帯電話機のエミュレーターによってデバッグなども楽に行なえるという

また、携帯電話機向けの業務用Flashコンテンツを作っている開発者から、パソコンとは異なる制限(アプリケーションファイルの容量制限など)があることについて、ムラーカ氏に聞いてみると、「Flash Lite 2.0は、デスクトップのFlash Player 7に基づいて作られている。モダンなActionScript(Flashコンテンツの動きを制御するプログラミング言語)が使えるだろう。ただし、どの機能をオン/オフにするかは実装する端末メーカー(日本の場合、実質的には携帯電話事業者)にその権利がある」と述べ、Flash Liteとしては進化を続けているが、そのスペックと実際の携帯電話機で使える機能に乖離がある理由を説明した。

なお、米国で配信提供され、日本でもNTTドコモの最新端末(“FOMA 903i”シリーズ)に組み込まれるFlash Lite 2.1では、ネイティブのIME制御が可能になるという。つまり、ゲームを始めるたびに入力モードを切り替える、といった手間がなくなるわけだ。


最後に、Flash Liteの今後の方向性についても聞いてみた。携帯電話機におけるFlashは現在、iチャネルやFlashゲームのようなリッチコンテンツを表示・再生するためのRIAプラットフォームとしての役割と、電話帳やメールなどの基本操作をグラフィカルなメニューで行なうユーザーインターフェースのプラットフォームとしての役割の2つがある。この点について、ムラーカ氏は、「日本人は最新の携帯電話機に何万円も払うが、米国ではそんなことはない。端末はタダでなければいやだ、という人が多い。これはほかの地域でも同様だろう。

そうした広い範囲をカバーするための下位機種向けFlash Liteと、パソコンと同じようなリッチコンテンツをケータイでも楽しみたいというユーザー向けの高機能端末に搭載するFlash Playerと高い互換性を持つFlash Liteだ。これらを使って、90%以上のパソコンにインストールされたFlash Playerと同じことをケータイの世界で目指していく」と述べ、Flashプラットフォームを拡充により開発者の意欲を高め、より強力な開発ツールを提供・販売していく同社のビジネスモデルの成功に強い自信を見せた。

(編集部 佐久間康仁)


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