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齋藤教授による“アイデアの出し方とPDFの関係性”とは? Adobe Acrobat 8デビューイベントレポート


2006年11月2日
会場となった東京国際フォーラムホールC
会場となった東京国際フォーラムホールCは満席

アドビ システムズ(株)は10月26日、PDF作成ソフト『Adobe Acrobat 8』、およびコラボレーション&コミュニケーションソフト『Adobe Acrobat Connect Professional』のリリースに関連して、東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて“新製品発表特別イベント〜Adobe Acrobat 8で実現する「価値共創」のための新しいコミュニケーション〜”と題したユーザーイベントを開催した。基調講演では“脳を混ぜ合う――知の交換と共有によるチーム力向上と極意”と題して、明治大学文学部教授の斎藤 孝氏が講演を行ない、Acrobatファミリーの製品戦略について、米アドビ システムズ(Adobe Systems)社のナレッジワーカー事業部担当副社長のケビン・リンチ(Kevin M.Lynch)氏が説明した。



話題の中心はAcrobatシリーズ
話題の中心はアドビの核となるAcrobat

イベントの冒頭、アドビ システムズ日本法人の代表取締役社長のギャレット・イルグ(Garrett J.Ilg)氏は、「社会の動きはますます早くなっています。情報は確実にデジタル化しており、複数の情報を結合し、コラボレーションを実現することが求められています。紙は今後も残るでしょうが、最善を尽すにはPDFが不可欠です。その点、このデジタル社会にアドビはピッタリ合っています。公私ともによりよいコミュニケーションを得るには、“Acrobat 8”が役立つでしょう。正真正銘のPDFを持つアドビに優位性があるのです」と語った。

ギャレット・イルグ氏
日本法人の代表取締役社長のギャレット・イルグ氏

これを受けて、“声に出して読みたい日本語”で知られる明治大学文学部の斉藤教授が基調講演を行なった。初めは固い雰囲気の会場だったが、斎藤氏の巧みな話術とパフォーマンスに座が暖まり、いつしか会場は斎藤氏の独壇場となった。斎藤氏は主に“コミュニケーションの中で生み出されるアイデア”について言及し、アイデアを生み出すためのコミュニケーションの取り方について多くを語った。講演の後半では、会場の参加者を巻き込んで具体的なコミュニケーション手法の実践を行なった。

斎藤 孝氏
基調講演は明治大学教授の斎藤 孝氏。アドビのイベントの講演者としては意外な人選?

斎藤氏はまず、アイデアの出し方とPDFの機能の関連性について、「学生のころから、紙を間に置いて、そこに互いに書き込みながら話をするということを友達とやっていました。これは情報を交換し、整理するのにとても便利なシステムです。離れた場所でも、アイデアを交互に書き込めて、ディスカッションできるといいなと思ってまして、そんなシステムがPDFの機能かなと思っています」と語った。さらに「アイデアを“束ねる機能”と“切り取る機能”があるといいですね。脳の中で何をグループにして束ねて、その中でどの部分を切り取るか。紙の上では実際の手作業でイメージしやすいのですが、電子文書=PDFの上でも(同じように)できればいいなと思っています」と語った。

●アイデアに不可欠なのは“身体”

体を動かしながら解説する斎藤教授
独自の身体論を、体を動かしながら解説する斎藤教授

斎藤氏はアイデアを出す具体的な方法について、「脳の中の文脈をうまく利用して、そのつながりと飛び具合を活用するということ。あるテーマを与えられて、それが“ザル”だとして、そこにいままでの経験値をぶちまけます。そのぶちまけた中から、残った砂金をかき集めてきて持ち寄るわけです」「自分の経験値を何かにぶちまけるのが慣れていくと、テーマが変わっても楽にできるようになります」とし、「(ザルの中身をぶちまけるのは)とても疲れるもので、この作業はひとりでやると“暗く”なります。暗くならないためには人が必要です」と実践的なアドバイスも行なった。

斎藤氏はまた、アイデアを生み出すには身体を伴う必要があるとし、「知識が増えるに従って、身体的は“冷え”てきます。知識人には反応がない人が多い。冷えた身体からはいいアイデアは生まれません」と指摘した。斎藤氏はその場で体を動かし始め、「肩甲骨や股関節を動かしたり、軟体動物のよう動かしてリラックスすることで、血流がよくなり、開放感が生まれます。違う発想で見てみようという気になります」と勧めた。さらに「団塊の世代は(アイデアが)固まりやすい。45才が分かれ目で、そのころから(発想の)“動脈硬化”が始まって、50才になった時には“不機嫌病”が始まっています。アイデアの大元は身体ですから、肩甲骨を動かして上半身をリラックスさせ、股関節を柔らかくして下半身を充実させる“上虚下実”という身体性にすることが必要です」と得意の持論を展開した。



●偏愛マップはコミュニケーションのセーフティーネット

続いて斎藤氏は、実際にチームでアイデアを出す前段階に必要なものとして、“偏愛マップ”についても言及した。「チームで組んだら、まず、自分の趣味や好きなものを何十個も列挙した“偏愛マップ”を書きます。そうするとお互いにどこかでひっかりがあって、必ず盛り上がります。プライベートな趣味が一致することで“セーフティーネット”ができ上がって、許せる範囲が圧倒的に広くなります。フォーマルでないところでつながったことで、フォーマルな場所でも安心して意見が出しやすくなるわけです。これで、チームとしての“価値共創”ができ、リラックスして個人個人で話せる環境ができるわけです」とした。氏は「以前、これを行なったところ、数年来の同僚の男性同士が突然、立ち上がって握手したことがありました。彼らのマップには“ハト”という言葉があって、それは二人とも小学生の時に伝書鳩を飼っていたことが分かったからでした」と実例を挙げて、偏愛マップの効果を強調した。

会場の様子1
会場の参加者も巻き込んで……
会場の様子2
即席でチームを組み
会場の様子3
アイデア出しを実践

ここまで説明してから、実際にアイデアを出す方法を会場の参加者にも実践してもらうことになった。参加者はその場で斎藤氏の促されて肩甲骨を回し、軟体体操で身体をリラックスさせた。次に隣の人と二人一組に斜めに向き合って、偏愛マップを作成した。続いて、実際にアイデア出しのテーマとして、“なにをボックス化すればいいか”、つまりカラオケをボックス(個室化)にして大成功したように、次は何をボックスにするのがいいか、アイデアを出そうというわけだ。会場の参加者は、とまどって手持ち無沙汰にしている人もいれば、親子ほどに年齢の離れた同士が楽しそうにアイデアを出している姿も見受けられた。

最後に斎藤氏は、「コミュニケーションのうまいやり方は、上手に相手に相談を持っていくことです。その場合、専門でなくとも丁寧に説明すると、相手は間違いなく乗ってきます。これはコミュニケーションの一番高等な技術です」と語り、「こうした対面状況が、電子文書=PDFの上でも生かされるといいと思います」と締めくくった。

●ナレッジワーカーの課題を解決するAcrobatファミリー

ケビン・リンチ氏
Acrobatを中心としたナレッジワーカー部門を率いるケビン・リンチ氏

ケビン・リンチ氏は、PDFを核としたAcrobatファミリーの製品戦略について説明した。ところでケビン・リンチ氏と言えば、同じ時期に米国ラスベガスで開催されたクリエイター/デベロッパー向けイベント“Adobe MAX 2006”でも講演しているが、こちらは同社CSA(最高ソフトウェア設計責任者)のケビン・リンチ氏であり、実はまったくの同名異人。なんとミドルネームまで同じということだ。

東京で講演を行なったAcrobat担当のリンチ氏は、まず自分のプロフィールについて説明したが、それはそのまま、今回登場したAcrobat Connect Professionalの歴史でもあった。自ら創業した米Presedia社が米マクロメディア(Macromedia)社に買収され、製品は『Macromedia Breeze』と名前を変え、今度はそのマクロメディアがアドビ システムズに統合されたことで、Acrobat Connect Professionalへと変貌を遂げたわけだ。そうした経緯からリンチ氏も同社の副社長となったわけだ。



リリースする企業が変遷してきたAcrobat Connect
Presedia、Macromedia、Adobeと、リリースする企業が変遷してきたAcrobat Connect
アドビのビジョン
アドビのビジョン

リンチ氏は続いて、変化するナレッジワーカーのワークスタイルについて語った。「ナレッジワーカーのワークスタイルには、“情報の入手と利用”、“共同作業”、“情報の共有”があり、これらの間に“様々な障壁”、“情報の氾濫”、“非効率性”といった課題がある。これを乗り越える必要があります』とした。さらに「1日のメールが300通を越え、一時はインスタントメッセージやチャットもいいと思いましたが、それもいつしか煩わしくなりました」と自身の経験を語った。

世界で7億台以上にインストールされているというPDFとFlash
世界で7億台以上にインストールされているというPDFとFlash

●ナレッジワーカーの課題を解決するAcrobatファミリー

その上でリンチ氏は、「正しいコミュニケーションを確立するには、プラットフォームやデバイス、セキュリティーポリシーなどの障壁を乗り越え、コミュニケーションやコラボレーションが行なえる環境が必要です。アドビのビジョンは、『人々を“正しい情報”、“正しい人々”、“正しい時”、“正しいデバイス”、“正しいタスク”につなぐ』ことであり、世界で7億台以上のパソコンやデバイスにインストールされているユニバーサルクライアントであるPDFとFlashはその障壁を乗り越えることができます」とした。

Acrobat 8 Standardの説明を受ける来場者
細かい機能についてAcrobat 8 Standardの説明を受ける来場者
ライセンス導入のコーナー
ライセンス導入のコーナーでも説明を熱心に聞く来場者も見られた

さらにリンチ氏はPDF、Flashの優位性について説明し、AcrobatやAcrobat Connect(Breeze)を導入しているユーザーの事例を紹介した。米国のT-Mobile USA社のAcrobat Connectの導入例や、米アドバンテスト社の技術文書を製品と整合させるためにPDFを活用している事例、さらには世界最大級の規模となる鹿島建設(株)でのPDF導入例などを紹介した。

(千葉英寿)


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