ASCII24 / インサイドストーリー
情報源は何と4000サイト! 新しいグーグルニュースの凄さ
2002年10月11日
グーグル(Google)の新しいニュースサービスが、米国のメディア業界でたいへんな話題となっている。“4000以上のニュースサイトから集めた記事が読める!”とうたったグーグルニュースは、インターネットのニュースメディアの存在価値を揺り動かしかねない可能性を秘めているからだ。
 |

グーグルニュースのトップページ。すっきりとした見やすいデザインだ |
10月3日付の記事『あなたの知らない検索エンジンの秘密』でも短く報じたが、グーグルニュースは次のような仕組みだ。
まずグーグルは、“クローラー””スパイダー”などとも呼ばれる同社自慢のプログラムをインターネットに放ち、世界中の4000以上のニュースサイトから記事を収集してくる。この際、収集先のニュースサイトの信頼性がどの程度のもので、従ってその記事がどの程度信用できるかという一種の格付けのようなことを行なっているようだ。ワシントンポスト(Washington Post)紙は「ニューヨークタイムズ(Newyork Times)はビルボード(Billboard)誌やローリングストーン(Rolling Stone)誌よりも高くランク付けされているようだが、どういう理由でどんな仕組みでそうなっているのか?」という質問を投げかけているが、取材に応じたグーグルのプロダクトマネージャー、メリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)氏に「それは企業秘密です」と回答を拒否されている。
収集された記事は、トップストーリーのほか世界、米国、ビジネス、科学技術、スポーツ、エンターテインメント、健康といったカテゴリーに分けられて表示される。この際、同じ出来事を扱った記事については、代表的なメディアのものだけがカテゴリーのトップに表示され、他媒体の同内容の記事は“and 70 related(ほかに70の関連記事あり)”という形で別ページに一覧表示される仕組みになっている。それぞれの記事に表示されるのは、リンクつきの見出しと媒体名、それに冒頭部分の文章の一部。元記事の添付写真が一緒に表示されることもある。各カテゴリーは十数分ごとに更新されるという素早さ。おまけに過去記事も30日分が保存されており、キーワード検索できるようになっているというから、至れり尽くせりだ。実際、グーグルニュースのトップページを見てみればわかるが、デザインも含め、これが人間の手を経由していないとはとうてい信じられない完成度だ。
 |

グーグルニュースのトップページからrelatedを開いたところ。関連記事のリンクがずらりと並ぶ |
さらに驚くべきは、ここまでの作業がすべて自動化されていることだ。収集した記事のカテゴリー分けだけでなく、どのような記事をサイトのトップストーリーにするか。記事のどの部分をどう表示するか。そしてどの記事を紹介すべきか。そういったことまでがすべてアルゴリズムによって処理されている。通常、人間の編集者が「今日はこのニュースをトップにしよう」「このネタはボツだ」といった形できわめて感覚的に処理していた編集作業が、ついにアルゴリズムによって行なわれる時代になったのだ。グーグルでは、編集作業にあたる判断基準の部分を“ニュースソース信頼性指標(source credibility measure)”と呼んでいるという。そしてこの新しいテクノロジーは、グーグルの精鋭技術者5人が過去9ヵ月にわたって取り組んできた成果だ。
ユーザー側から見れば、グーグルニュースのメリットは明らかだ。
まず第1に、複数の媒体の記事を同時にシームレスに読むことができる。たとえば米国議会がイラクに対しての攻撃容認を決議した、という記事を読もうとした場合、ブックマークに登録したワシントンポストやニューヨークタイムズ、CNNなどのサイトを何度も開いて記事を探し直す必要はない。グーグルニュースのトップストーリー、あるいは“米国”のカテゴリで記事を探し、“related”のページを開いて各媒体の記事を拾い読みできるのだ。
第2に、世界各国の記事が集められているから、日ごろはまったく巡回対象に入れていないイスラエルやアラブ諸国などでそのニュースがどう扱われているかを知ることもできる。これは多様な価値観を知るという意味では、グーグルニュースの非常に重要なメリットといえる。
しかしそのいっぽうで、問題もある。新聞社やテレビ局、通信社などのインターネットメディアは、各媒体なりの編集方針を持っている。どのニュースをトップにして、どのニュースをボツにするか。そうした編集方針も、各社の独自性のひとつとなっている。ワシントンポストのハワード・カーツ(Howard Kurtz)記者は、コラムの中でこう書いている。
「われわれがあるメディアの記事を読むとき、それは個別の記事をただ読むということを得ているだけではない。そのメディアが編集方針としてどの記事をトップにし、どんな記事を重要視しているかというその社の判断基準も受け入れているのだ。そうした判断基準を信用するというのは、われわれがどのメディアを選択し、どのメディアを選択しないかという動機のひとつになっている。しかしグーグルニュースは判断基準をコンピューターのアルゴリズムに頼っていて、われわれにどのような記事を読むべきかという考え方を提示してくれるわけではない」
カーツ記者はグーグルニュースの登場にかなり憤然としているようで、こうも書いている。「もし間違った記事を書いた場合、責任を問わなければならないのはワシントンポストやCBSやCNNであって、グーグルではない。グーグルは何の編集方針もなしに記事を運ぶ、ただのベルトコンベアーに過ぎない」
もうひとつは、各メディアの広告収益の問題だ。グーグルニュースを通じてユーザーがリンク経由で個別の記事に直接アクセスするようになると、各メディアのトップページは誰も見なくなってしまう可能性がある。これは、各メディアの媒体力を低下させ、広告収入を減らしていく可能性がある。
米国のオンラインマガジンSlateは「グーグルはニュース速報のメディアとしてすぐに普及するだろう。人間が編集したニュースサイトでは、グーグルのロボット編集には絶対に勝てない」とコメント。ニュース速報は今後、インターネットの中でコモディティー(日用品)化し、グーグルニュースのような自動処理されたメディアに収束していくのではないかと指摘している。そしてニュース自体が、コモディティー化したニュース速報と、より掘り込んだ深い記事とに二極化していくのではないかと予測している。
グーグルニュースは批判を浴びながらもメディアの世界からはたいへんな注目を集めているようで、すでに世界中の無数の出版社や新聞社、通信社などから「ぜひわが社のニュースもグーグルニュースに参加させてほしい」というオファーが来ているという。今後、たいへんな勢いで勢力を伸ばしていくことは間違いなさそうだ。
(編集部 佐々木俊尚)
|