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【IT事件簿】携帯電話は便利な盗撮マシン?


2002年7月12日

愛知県尾張地区の市立中学1年の女子生徒が、同じ学校の3年の女子生徒2人にスーパーのトイレで裸にされたうえカメラ付き携帯電話で写真撮影され、写真を他の生徒にメールで送信されるというイジメが4月にあったことが、地元新聞社の報道で7月10日発覚。翌11日には通信社が全国に配信した。また長崎県大村市では、カメラ付き携帯で高校1年の女子生徒の制服のスカートの中をコンビニの店内で隠し撮りしたとして7月4日、同市の会社員の男(24)が県迷惑防止条例違反の現行犯で逮捕された。一方全国紙の6月29日の報道では、兵庫県警の調べとして昨年秋からこれまでに7件、同県内でカメラ付き携帯による盗撮を摘発したという。直近では6月11日に駅構内で無職の男(26)を逮捕している。

都会の死角に潜むケータイの罠
だれでも簡単に“盗撮”できてしまう時代がやってきた。都会の死角に潜むケータイの罠(写真と本文は関係ありません)

携帯電話の10台に1台がカメラ付き

J-フォンが2000年11月に、世界の携帯電話で初めてカメラ付き端末(シャープ製)を発売してから1年半。J-フォンの発表ではカメラ付きは今年5月に500万台を突破し、J-フォン加入者の4割を占めるまでに増加。J-フォンは2001年6月、携帯で写真を撮ってメールで送るサービスを“写メール”と名付け、キャンペーンを開始。カメラ付き携帯のラインナップを充実させたことで、大ブレイクした。写メールの躍進を受けて、競合する携帯電話会社もカメラ付きを投入。auは今年4月1日、NTTドコモも、それまで次世代携帯のFOMAのみだったカメラ付きを従来のPDC端末に搭載し、iモードのサービスの一つ“iショット”としてスタートさせた。J-フォンにauとドコモを合わせると、日本の携帯累積加入者7000万のうち600万近く、携帯11、2台に1台カメラが付いている計算になる。

ここまで普及してくると、当然さまざまな事件も起きてくる。盗撮に関しては、J-フォンのカメラ付き携帯第1号発売直後から問題視されてきた。携帯電話という身近なありふれた機器であることと小型さから、一般的にカメラを意識させないからだ。当然J-フォン側も予想していたことで、シャッターを切ると必ず電子音が鳴る仕様にした。しかし、発売後は女性のスカートの中の盗撮で摘発された事例が複数あった。ただ当時のカメラ付き携帯のカメラの画素数は7〜10万程度。プリントはもちろんパソコンのディスプレーで見ることすら厳しいほど。盗撮がそれほど大きな問題に発展しなかったのは、このあたりにも理由があったようだ。

だが、今年に入ってから発売された携帯搭載カメラの画素数は、一気に31万までアップした。シャープ製(J-フォン、ドコモ)、カシオ計算機(au)の端末。31万画素といえば、640×480ドット(VGA)相当が撮影可能。そこそこ実用に足るレベルだ。カメラ付き携帯で撮影した画像は、携帯を使って瞬時にメールで送信できる。例えば、盗撮した実用に足る画質の写真をすぐに外部に送ることが可能な訳で、その後、携帯本体から撮影した画像と送信メールを削除しておけば、盗撮の証拠を消すことも簡単。台数が600万近くなり、各携帯電話会社が発売している一般化した状況と、カメラ自体の性能の向上が今回のような事件につながっているといえるだろう。

愛知のイジメでは3年生の女子生徒が、教師に話したら写真をばらまく、と1年生を脅し撮影した画像を友人にメール送信した。その後の学校側の調査で、撮影した画像はそれ以上送信していないし写真も削除した、と3年生は話したという。しかし被害者側は、今後写真が出回らないという確証はない、と不満を表しているようだ。携帯で撮った写真は瞬時に簡単にメール送信できる。受け取った友人、あるいは撮影した3年生がもし別の相手にメールで送っていたら、今後その画像がネットで世界中を駆け巡ることにもなりかねない。

摘発されるのは氷山の一角

長崎の盗撮は、事件としてはオーソドックスなケース。会社員の男はコンビニ店内で陳列された化粧品を見ていた女子生徒に背後から近付いて、スカートの中を撮影した。店員が目撃して取り押さえられたのだが、携帯の中には鮮明な盗撮画像が残っていたという。たまたま店員が見ていたから摘発された。兵庫県警の統計では昨年秋から3件、今年に入って4件を摘発しているが、県警は氷山の一角とみている。駅構内で捕まった無職の男の携帯の中には4、5人の女性の写真8枚があったという。

カメラ付き携帯をめぐっては、6月5日に和歌山地裁で開かれた毒物カレー裁判の論告求刑公判で、法廷内への持ち込みが禁止された。和歌山地裁は、1998年に同じ被告の隠し撮り写真が写真週刊誌に掲載されたことがあり、盗撮に対して特に敏感になっていた。カメラ付き携帯=盗撮機、というイメージが一般化すれば、博物館や美術館などさまざまなカメラ持ち込み禁止場所で、チェックが行なわれるかもしれない。

駅のホーム、電車の中、喫茶店といった多くのユーザーが携帯でメールを書いている場所で、メールを打っている携帯がカメラ付きだったとしたら、それだけで盗撮の疑いをかけられる可能性もある。実際、電車の対面シートの向かいに座って携帯画面を見ている男性がいて、その携帯がカメラ付きだったら席を変わる、という女性もいる。誰でもどこでも簡単に写真を撮って楽しめ、気軽にメール送信できて便利なカメラ付き携帯。利用者が増えていく半面、危ない盗撮機として風当たりが強まっていくことも考えられる。

サウジアラビアでは販売禁止

宗教的な理由から写真を嫌うイスラム圏のサウジアラビアでは、6月12日付の英字紙の報道によると、政府がカメラ付き携帯の国内販売を全面的に禁止した。宗教警察が、女性の盗撮に悪用されているとして政府に対応を要請していた。日本のようにスカートの中、というのではなく、単に女性の姿を撮っているだけで盗撮にあたるお国柄が背景にある。

盗撮が多いからといってまさか日本でもサウジアラビアのように販売禁止になるとは考えにくいが、警察側がカメラ付き携帯を良く思っていないことは事実。兵庫県警は、被害者も周囲も気付きにくく被害者が激増する恐れがある、と注意を呼び掛けているという。被害者が増えているから規制しなければ、というのが警察側の基本的な考え方。そこには楽しさや便利さを優先させるスタンスはない。

日本発のカメラ付き携帯は、J-フォンの親会社、英ボーダフォンが今春から欧州各国で販売。サウジアラビアをはじめ世界中に広がっている。カメラ付き携帯に盗撮機のレッテルを張り、サウジアラビアのように規制しようとする国が他にも現れてくるかもしれない。

このところの日本の報道自体が、カメラ付き携帯を悪者扱いする意図も感じられる。カメラ付き携帯ではなくデジカメ単体機での盗撮やイジメだったら、事件として報道されていただろうか。カメラ付き携帯でなくても、腕時計内臓型をはじめ盗撮に悪用可能な超小型デジカメはいくらでも販売されている。しかし、カメラ付き携帯は危ない、というイメージだけ独り歩きしていく。

(麻河紀人)




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